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労働政策研究・研修機構がモニター
企業を対象に行っているビジネス・
レーバー・モニター調査では、二〇〇
九年八月に高齢者・障害者雇用に関す
る特別調査を実施した。
Ⅰ 高齢者雇用
昨秋以降の経済危機が、高齢者雇用
や二〇〇六年四月一日から施行された
改正・高年齢者雇用安定法に基づく高
齢者の雇用延長の実施にどのような影
響を与えているかについて聞いた。
(1)定年制について
定年制について聞いた設問では、継
続雇用制度があって「定年がある」と
した企業が全体の九七・一%となるな
ど大半を占めた。定年年齢は六五歳が
一件、六三歳が三件あったほかは、す
べて六〇歳となった。
(2)高齢者の継続雇用について
継続雇用制度があって「定年がある」
と回答した企業に、継続雇用制度の対
象について聞いたところ、「採用基準に
よる選考でほぼ全員を採用している」
(七〇・〇%)、「採用基準による選考
で一定割合を採用していない」(一八・
六%)、「希望者全員を採用している」
(八・六%)の順となった(図1)。
昨年同期と比較した高齢者の継続雇
用者の割合を聞いた設問では、「選考基
準の運用は昨年同期と変わらない」(五
七・一%)、「昨年同期と変わらず希望
者のほぼ全員を採用している」(二八・
六%)、「昨年同期と比べ、採用する者
の割合が低下した」(八・六%)、「昨年
同期と比べ、採用する者の割合が上昇
した」(一・四%)の順となった(図2)。
将来の継続雇用の方向性を聞いた設
問では、「変化なし」が八五・七%と大
半を占め、「選考による採用基準を厳格
に運用し、対象者を絞り込む」(八・
六%)と「選考基準を緩和し、対象者
を拡大する」(二・九%)は少数にとど
まった。
(3)経済危機と高齢者雇用
景気の状況により高齢者の雇用が負
担になっているか尋ねた設問では
「なっている」(「ややなっている」と「か
なりなっている」の合計)が全体の四
分の一ほど(二五・七%)、「なってい
ない」(「あまりなっていない」と「まっ
たくなっていない」の合計)が合計の
五分の一ほど(一八・六%)となった
が、「どちらともいえない」(五五・七%)
ビジネス・レーバー・モニター
特別調査
高齢者雇用への景気後退の影響は軽微にとどまる
図1 高年齢者の継続雇用制度の対象(N=70)
図2 昨年同期と比較した高年齢者の継続雇用者の割合(N=70)
図3 景気の状況により高齢者の雇用が負担となっているか
(N=70)(複数回答)
調査・解析部
特集―これからの高齢者雇用を考える
Business Labor Trend 2009.12
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が半数を超え、最も多い結果になった
(図3)。
雇用調整を行った(行う)際、正規
雇用の高齢者と正規雇用の若年者では、
どちらの雇用維持を優先した(する)
かを聞いた設問では、「どちらともいえ
ない」が七割弱(六七・一%)と大半
を占めたが、「若年者」とする回答が三
割(三〇・〇%)となる一方で、「高齢
者」との回答は少数(二・九%)にと
どまった(図4)。
次いで、雇用調整を行った(行う)
際、定年後の契約社員等の高齢者(継
続雇用者)と、高齢者以外のパート・
アルバイト、契約社員等の非正規労働
者では、どちらの雇用維持を優先する
か聞いた設問では、「どちらともいえな
い」が六割強(六二・九%)となり、
定年後の契約社員等の高齢者(継続雇
用者)が三割弱(二七・一%)と続い
たが、「高齢者以外のパート・アルバイ
ト、契約社員等の非正規労働者」との
回答も一割(一〇・〇%)あった(図
5)。
前年同期と比較した高年齢従業員
(五五歳以上)の増減についても聞い
ている。これによれば、五五〜五九歳
では、「増えた」(「大幅に増えた」「やや
増えた」の合計)が三四・三%、「横ば
い」が四八・六%、「減少した」(「やや
減少した」「大幅に減少した」の合計)
が一七・一%だった。
六〇〜六四歳では、「増えた」(「大幅
に増えた」「やや増えた」の合計)が五
一・四%、「横ばい」が四〇・〇%、「減
少した」(「やや減少した」「大幅に減少
した」の合計)が七・一%だった。
六五歳以上では、「増えた」(「大幅に
増えた」「やや増えた」の合計)が七・
一%、「横ばい」が六二・九%、「減少し
た」(「やや減少した」「大幅に減少した」
の合計)が五・七%だった。
景気の状況が高齢者の雇用に負担と
「なっていない」とする回答と「どち
らともいえない」とする回答が全体の
七割を超える一方で、全体の四分の一
が「負担となっている」と回答してい
る。しかし、高年齢者の継続雇用の状
況をみると、「ほぼ全員を採用してい
る」と「希望者全員を採用している」
の合計が八割弱となり、昨年同期と比
較した高齢者の継続雇用者の割合では、
「選考基準の運用は昨年同期と変わら
ない」と「希望者のほぼ全員を採用し
ている」の合計が八七・〇%となった。
その一方で、「昨年同期と比べ、採用す
る者の割合が低下した」は一割弱にと
どまっている。景気の状況によって、
高齢者の雇用に負担を感じるとする割
合に比べると、高齢者の継続雇用に与
える影響は軽微にとどまっていると言
えるだろう。
Ⅱ 障害者雇用
二〇〇六年一二月の国連総会で採択
された「障害者の権利に関する条約」
では、「合理的配慮」※の否定が「障害
を理由とする差別」に該当するとされ
る。(日本は二〇〇七年九月署名、未
批准)
この「合理的配慮」に関連し、障害
のある従業員に対する雇用管理上の課
題や、働きやすくするために行ってい
ること、今後実施したいことなどにつ
いて聞いた。
※「合理的配慮」とは、条約上「障害
者が他の者と平等にすべての人権及び
基本的人権を享有し、又は行使するこ
とを確保するための必要かつ適当な変
更及び調整であつて、特定の場合にお
いて必要とされるものであり、かつ、
均衡を失した又は過度の負担を課さな
いもの」とされる。
(1)前年同期と比較した障害を持つ
従業員の増減
前年同期と比較した障害を持つ従業
員の増減を聞いたところ、「増えた」
(「大幅に増えた」「やや増えた」の合計)
が二四・三%、「横ばい」が六四・三%、
「減少した」(「やや減少した」「大幅に
減少した」の合計)が一一・四%だっ
た。
障害者雇用のスタンスを聞いた設問
では、「現在の水準の維持」と「障害者
の雇用は現在より増やしたい」が全体
の大半を占め、それぞれ、四二・九%
と五四・三%となった。
(2)障害のある従業員が働きやすく
するために行っていること
障害のある従業員が働きやすくする
ために行っている配慮について、障害
の種類別に聞いた設問では、「視覚障害
者、聴覚障害者又は盲ろう者」には、「相
談体制の確保(専ら従業員)」(四五・
七%)、「医療面・体調管理面」(四二・
九%)、「機器・設備の設置・改修」(三七・
一%)、「配置転換」(二七・一%)、「職務
の再編成」(二四・三%)の順となった。
ついで、「肢体不自由者」に対しては、
「機器・設備の設置・改修」(五四・三%)、
図4 雇用調整を行った(行う)際、正規雇用の高齢
者と正規雇用の若年者では、どちらの雇用維持を優先
した(する)か(N=70)(複数回答)
図5 雇用調整を行った(行う)際、定年後の契約社
員等の高齢者(継続雇用)と、高齢者以外のパート・
アルバイト、契約社員等の非正規労働者では、どちら
の雇用維持を優先するか
特集―これからの高齢者雇用を考える
Business Labor Trend 2009.12
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「医療面・体調管理面」(五〇・〇%)、「相
談体制の確保(専ら従業員)」(四五・
七%)、「配置転換」(三五・七%)、「職務
の再編成」(二七・一%)の順となった。
「内部障害者」に対しては、「医療面・
体調管理面」(五一・四%)、「相談体制
の確保(専ら従業員)」(四二・九%)、「配
置転換」(二五・七%)、「勤務時間(出
社時間)」(二四・三%)の順となった。
「知的障害者」に対しては、「相談体制
の確保(専ら従業員)」(三八・六%)、「職
場介助者の配置( 専ら従業員)」(三〇・
〇%)、「医療面・体調管理面」と「職
務の再編成」(ともに二五・七%)、「勤
務時間(出社時間)」(二四・三%)の
順となった。「精神障害者」に対しては、
「相談体制の確保(専ら従業員)」(三八・
六%)、「医療面・体調管理面」と「職
務の再編成」(ともに二五・七%)、「勤
務時間(短時間勤務制度の導入)(二二・
九%)、「勤務時間(出社時間)」(二一・
四%)の順となった。
(3)障害のある従業員に対する雇用
管理上の課題
障害のある従業員に対する雇用管理
上の課題について聞いた設問では、「視
覚障害者、聴覚障害者又は盲ろう者」
が「コミュニケーション」(五五・七%)、
「精神・心理的な課題」(二五・七%)、「職
務遂行」(一七・一%)の順となった。「肢
体不自由者」が「通勤」(四七・一%)、「体
調管理」(四〇・〇%)、職務遂行(二七・
一%)、「精神・心理的な課題」(二一・
四%)の順となった。「内部障害者」が、
「体調管理」(五二・九%)、「勤務時間」、
「職務遂行」と「精神・心理的な課題」
(ともに一七・一%)の順となった。「知
的障害者」が「コミュニケーション」
(三二・九%)、「精神・心理的な課題」
(二二・九%)、「職務遂行」(二一・四%)、
「体調管理」(一七・一%)の順となっ
た。「精神障害者」が「精神・心理的
な課題」(二七・一%)、「コミュニケー
ション」と「職務遂行」(ともに一七・
一%)、「体調管理」(一五・七%)の順
となった。
(4)障害のある従業員に対し、今後
実施したいと考えている配慮事項等
障害のある従業員に対し、今後実施
したいと考えている配慮事項等につい
て聞いた設問では、「視覚障害者、聴覚
障害者又は盲ろう者」が「機器・設備
の設置・改修」(二一・四%)、「医療面・
体調管理面」と「配置転換」(ともに一
五・七%)、「相談体制の確保(専ら従
業員)」(一二・九%)、「職務の再編成」
(一一・四%)の順となった。「肢体
不自由者」が「機器・設備の設置・改
修」(三〇・〇%)、「医療面・体調管理
面」(二〇・〇%)、「相談体制の確保(専
ら従業員)」(一五・七%)、「職務の再編
成」(一二・九%)、「配置転換」(一一・
四%)の順となった。「内部障害者」
が「医療面・体調管理面」(一八・六%)、
「相談体制の確保(専ら従業員)」(一五・
七%)、「職務の再編成」(一二・九%)
の順となった。「知的障害者」が「相
談体制の確保(専ら従業員)」(一〇・
〇%)となった。
(5)障害のある従業員に対する配慮
事項のうち、現在実施していない理由
障害のある従業員に対する配慮事項
のうち、現在実施していない理由につ
いて聞いたところ、「対象者なし・必要
性に乏しい」を除き、「経済的負担」が
もっとも多い回答となり、「機器・設備
の設置・改修」(一八・六%)、「通勤(バ
ス等による送迎)」(一七・一%)、「相談
体制の確保(専ら外部の専門家)」と「通
勤(バス等による送迎)」(一五・七%)
の順となった。そのほかの理由として、
「ルール・慣行になじまない」では「勤
務時間(短時間勤務制度の導入)」(一
二・九%)があった。
(6)障害のある従業員に対して、助
言、指導、相談を行う仕組み
障害のある従業員に対して、助言、
指導、相談を行う仕組みについては、
「特にない」(六八・六%)を除けば、「管
理職を担当者(責任者)として指名」
(二四・三%)がもっとも多い回答だっ
た。
(7)国連の「障害者の権利に関する
条約」に関する認知度
国連の「障害者の権利に関する条約」
について知っているかどうか尋ねた設
問では、「多少は知っている」(四八・
六%)、「全く知らない(二〇・〇%)、「概
ね知っている」(一七・一%)、「よく知っ
ている」(一二・九%)の順となった。
(調査・解析部 山崎 憲)
調査の趣旨
労働政策研究・研修機構は、企
業、事業主団体、企業別労働組合、
産業別労働組合をモニターとして、
年四回、定点観測的に景気判断や
雇用動向、労使の課題などを尋ね
る「ビジネス・レーバー・モニター
調査」とあわせて、特別調査を実
施している。今回の調査の対象は、
当機構のビジネス・レーバー・モ
ニターに登録した民間企業九一社。
調査方法は、インターネット上の
専用回答WEBサイトを利用した
アンケート方式で、調査時期は二
〇〇九年八月一八日〜八月三一日。
回答状況は、民間企業七〇社(回
収率七六・九%)。
本稿は、企業モニターに対して、
特別テーマ「高齢者、障害者雇用」
について聞いたものの概要である。
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