Business Labor Trend 2009.12
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イギリス
「定年制は合法」と高等
法院が判断
定年制を容認する現行の年齢
差別禁止法制がEU指令に違反
するとして、高齢者問題に関す
る非営利団体が政府を相手取っ
て二〇〇六年から争っていた事
案で、高等法院(High Court)
は九月、これを合法とする判決
を下した。定年制に関する法制
度の見直し作業に政府が積極的
な姿勢を示していることを評価
したもので、当面は現行の六五
歳定年制が継続されるが、近い
将来に廃止もしくは年齢引き上
げが実施される可能性が高まっ
ている。
雇用と職業訓練に関して年齢
を理由とする差別を禁止した二
〇〇〇年のEU指令をうけて、
イギリスでは二〇〇六年に雇用
均等(年齢)規則(Employment
Equality (Age) Regulations
2006)が成立した。しかし、
同規則が六五歳定年制を認める
内容であったことから、高齢者
問題に関する非営利団体である
Age Concern とHelp the Aged
が、規則はEU指令の国内法化
として不適合であるとして、規
則施行に合わせて高等法院に申
し立てを行っていた。高等法院
は、EU指令の解釈に関して欧
州司法裁判所に判断を仰ぎ、こ
の三月には定年制は適法との判
断を得た。ただし欧州裁
は、定年制が適切かつ必
要なものであることを証
明するよう政府に求め、
これに基づいて高等法院
がその妥当性を判断すべ
きであるとしていた。こ
れを受けて、七月から高
等法院での審理が再開さ
れ、九月二五日に判決が
示された。
高等法院は、雇用均等
(年齢)規則における定
年制の容認は二〇〇六年
当時の状況に照らして適
法としつつも、現在は経
済環境の変化や、寿命の伸長に
よる社会保障制度への負荷の増
大などの状況に鑑みて、もし現
在同様の事案が生じた場合であ
れば違法と判断するだろう、と
の留保をつけ、少なくとも六五
歳からの引き上げによる対応の
必要を示唆している。最終的に
適法と判断した要因として、政
府の定年制見直しに関する積極
的な姿勢を挙げている。政府は、
七月の高等法院での審理再開と
前後して、二〇一一年に予定し
ていた定年制の法律上の扱いの
見直し作業を二〇一〇年に前倒
しで実施することを決め、さら
に公務員に関する定年制の廃止
(一部の上級職員を除く)を二
〇一一年までに実施する方針を
示していた。
現地メディアによれば、この
判決を待って雇用審判所で留め
置きとなっていた年齢差別に関
する申し立て数百件(二〇〇八
年七月時点では二六〇件)が棄
却されるとみられる。
経営者団体の多くは、高等法
院の判断を称賛している。イギ
リス産業連盟(CBI)は、同
判決は「現在企業が(高齢労働
者に関して)取っているアプ
ローチを支持するもの」であり、
「コモンセンスの重要な勝利」
だとしている。またイギリス商
工会議所(BCC)も、「ほとん
どの企業は高年齢労働者とその
蓄積された経験が自社にもたら
す利益を正しく評価して」おり、
自らの調査では「定年制を導入
している企業は全体の四分の一
に過ぎず、制度の乱用はみられ
ない」として、判決は「正当な
判断」であるとの見解を示して
いる。
一方、労務管理の専門団体で
ある人材開発協会(CIPD)
は、「政府自身がすでに定年制の
終わりが近いことを認めている
にもかかわらず、今回の判決に
よりその決断が先送りされたこ
とで、今後さらに数千人の高年
齢労働者が、労働市場の状況が
改善しない中で退職を強いられ
ることになる」と批判的だ。ま
た、定年制廃止によりパフォー
マンスが低下した労働者の解雇
が困難になる、との論調に対し
ては、パフォーマンスの低い労
働者の解雇に二五年も待つ必要
はなく、業績評価制度との併用
すべきだとしている。
現在議会で審議が進んでいる
平等法案で、年齢差別の禁止に
関する措置の強化をはかるべき
だ、との意見もある。人権保護
のための政府機関である平等人
権委員会(EHRC)は、定年
制の廃止を法案に盛り込むよう
政府に求めている。また、年齢
による雇用差別の廃止を訴える
非営利組織の年齢・雇用ネット
ワーク(TAEN)は、男女間
の賃金格差の是正に関する措置
としてすでに法案に盛り込まれ
ている「賃金監査」(企業に対し
て、男女従業員間の賃金格差の
状況について定期的に監査機関
に報告することを義務付ける)
制度に倣い、企業に高齢者雇用
比率の提出を義務付けるべきで
あるとしている。
現行制度は、定年年齢に達す
る従業員が雇用主に対して雇用
の延長を申請する権利が認めら
れている。雇用主はこの権利に
ついて、当該の従業員が定年年
齢に達する六カ月前までに通知
する義務を負う。延長の申請は
通知を待って、かつ定年の期日
の三カ月前までに行わなければ
ならず、雇用主がこれを却下す
る場合、従業員にその理由を示
す義務はない。政府の予定する
見直し作業により、定年制の容
認が原則廃止となる場合も、年
齢を業務遂行上の要件とするこ
とが客観的に正当であると認め
られれば、企業は定年制を維持
することができるとみられるが、
その基準等は不明だ。
なお、統計局の労働力調査に
よれば、年金支給開始年齢(男
性が六五歳、女性が六〇歳)を
超える就業者数は二〇〇九年八
月時点で一四〇万人で就業者全
体の五%程度を占め、就業率は
一二・二%となっている。特に、
最近の不況で他の年齢層におけ
海外労働事情
海外労働事情
Business Labor Trend 2009.12
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る就業者数が減少する中、この
年齢層は女性を中心に就業者数
が堅調に増加している。
(国際研究部)
アメリカ
経済刺激策による雇用創
出効果を確認―政府によ
るレポートとその評価―
総額七八七〇億ドルの経済刺
激策(二〇〇九年二月決定)は、
八月の時点で一二八二億ドルが
執行された。プログラムを実行
する省庁別では、保健社会福祉
省(HHS):三四九億ドル、
労働省:三〇八億ドル、教育
省:二二六億ドル、社会保障
庁:一三二億ドルの順となって
いる(1)。
保健社会福祉省への資金は、
非営利組織を強化し低所得者層
の経済的な回復を促進すること
を目的とするコミュニティ強化
のためのプログラムや、ヘルス
センターの診療記録の電子化お
よびネットワーク化を目的とす
るプログラムのためのものであ
る。一方、保健社会福祉省に続
いて二番目に大きな規模になっ
ている労働省が実施するプログ
ラムは各州政府が運営する失業
保険制度の改革や失業者を対象
とした州レベルでの職業訓練プ
ログラムの支援のために活用さ
れている。
このような経済刺激策の効果
は徐々に顕在化している。米連
邦準備制度理事会(FRB)が
九月に開催した連邦公開市場委
員会(FOMC)では、経済活
動の深刻な落ち込みから上向き
に転じたと委員の見解が一致し
た。ただ一方で、委員の多数は、
労働市場や製品市場については、
今後数年にわたりかなり停滞傾
向が続くという見方をもってお
り、賃金と物価上
昇が抑制される可
能性もあると指摘
している(2)。
また、全米サプ
ライ・マネジメン
ト協会が発表する
ISM製造業・非
製造業景況感指数
によれば、二〇〇
八年一月以来縮小
傾向にあった製造
業が二〇〇九年八
月に一九カ月ぶり
に拡大傾向に転じ、サービス業
では二〇〇九年九月、二〇〇八
年八月以来一三カ月ぶりに拡大
傾向に転じた(3)。
経済刺激策の効果を検証する
政府のレポートも公表されてい
る。大統領経済諮問委員会(C
EA)が九月一〇日に発表した
『アメリカ復興再投資法二〇〇
九年第1四半期レポート』によ
れば、アメリカ復興再投資法に
よる効果によって、第2四半期
のGDPが二・三%ポイント引
き上げられ、第3四半期では二・
七%ポイント引き上げ効果があ
るだろうと結論づけた。このこ
とによって雇用への効果は第3
四半期の時点で六〇万人から一
一〇万人増の効果があると試算
している(4)。同じくホワイト
ハウスが一〇月一九日に公表し
たレポート『アメリカ復興再投
資法の教育への効果』によれば、
公立の学校や高等教育機関に
よって二五万人の雇用が維持ま
たは創出されたとしている。そ
の一例として、ニューヨーク市
では教員の職が一万四〇〇〇人
以上、カリフォルニア州ロサン
ゼルスでは教員の職が六三二六
人分、フロリダ州のマイアミで
は職員一九四四人分、ネバダ州
ラスベガスでは職員一一〇〇人
分などが挙げられている(5)。
ただ、こうした効果が見える
一方で、現在決定している施策
では十分な回復が実現している
わけではなく、次なる施策を実
施すべきとの見解がある。ペロ
シ下院議長(民主党・カリフォ
ルニア州選出)は、更なる雇用
創出と失業者支援のための施策
を、雇用創出プログラムへの直
接の支出と税制面での対策など
多面的に考えるべきであるとし
ており、実際に九月に失業率が
高い州を対象として緊急失業給
付期間を更に一三週延長する法
案を提出している(6)。また、
ムーディーズエコノミーのマー
ク・ザンディ・チーフエコノミ
ストは、現時点で見え始めてい
る回復は暫定的なものであり、
来年、再び景気後退局面に突入
する懸念材料が残されていると
指摘する。その上で、就業者人
口が今回の景気後退前の水準に
戻るには二〇一三年までかかる
と分析している(7)。
〔注〕
1.政府公式ホームページ(Recovery.
gov)
(http://www.recovery.gov/Pages/
TextView.aspx?data=allAgenciesDe
sc)
2.連邦準備制度理事会(FRB)
のホームページ:
(http://www.federalreserve.gov/
n e w s e v e n t s / p r e s s / m o n e t a r y /
fomcminutes20090923.pdf)
3.全米サプライ・マネジメント協
会( I n s t i t u t e f o r S u p p l y
Management :ISM) のISM製造業・
非製造業景況感指数による。IS
Mの指数は、パーセンテージで表
され、五〇%を景気の拡大・後退
の分岐点としており、五〇%を上
回れば景気拡大、五〇%を下回れ
ば景気後退と判断される。
(http://www.ism.ws/ISMReport/
PastRob.cfm)
4."The Economic Impact of the
American Recovery and Reinvestment
Act of 2009, First Q ua rterly
Report", September 10, 2009:
(http://www.whitehouse.gov/assets/
documents/CEA_ARRA_Report_Final.
pdf)
5." E d u c a t i o n a l I m p a c t o f t h e
A m e r i c a n R e c o v e r y a n d
Reinvestment Act, A Report Issued
by the Domestic Policy Council
Executive Office of the President
I n C o o p e r a t i o n w i t h t h e U . S .
Department of Education", October
19, 2009
(http://www.whitehouse.gov/assets/
documents/educational_impact_AR
RA_1.pdf)
6."Daily Labor Report", Oct. 22,
2009, Bureau of National Affairs
Inc.
7.Moody's Economy.com ホームペー
ジ:
(http://www.economy.com/markzandi/
documents/JEC-Fiscal-
Stimulus-102909.pdf)
(国際研究部 北澤謙)
ドイツ
総選挙で中道右派連立政
権が誕生
ドイツ連邦議会(下院)は、
一〇月二八日に首相選挙を行い、
九月の総選挙で勝利を収めたア
ンゲラ・メルケル現首相を選出
し、ケーラー大統領が首相に再
任した。メルケル首相は、その
後閣僚指名を行い、一一年ぶり
にキリスト教民主・社会同盟(C
海外労働事情
Business Labor Trend 2009.12
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DU/CSU)と自由民主党(F
DP)の中道右派連立政権が正
式に誕生した。
なお、新しい連邦社会労働大
臣には、前政権で防衛相を務め
たキリスト教民主同盟(CDU)
のフランツ・ヨーゼフ・ユング
氏が横滑りで起用された。これ
まで全く労働分野の経験がない
同氏の指名は、メディアや国民
を非常に驚かせた。
過去一〇年で最悪と言われる
経済状況の中で、操短手当の財
源問題など課題は山積している。
今後予想される大量の失業者の
出現をいかに食い止め、効果的
な労働政策を策定していくのか、
ユング新社会労働大臣の手腕に
注目が集まっている。
新しい労働政策―CD
U/CSU―FDP連
立協定
連立政権の発足に先立
ち、キリスト教民主・社
会同盟(CDU/CSU)
と自由民主党(FDP)
の両党は、二四日、一二
四頁に及ぶ連立協定の内
容を発表し、二六日に署
名を行った。この連立協
定書は、今後、連立政権
が政策を実施していく際
の基本的な考え方となる
もので、署名後の修正や
この協定内容に反する政
策案の提出はできない。
しかし、情勢の変化や個
別の政策にある程度の柔軟性を
持たせるために、比較的緩やか
な書きぶりとなっていることが
多い。
以下に、連立協定書の労働政
策関連部分を概観する。
(1)方向転換した最低賃金
政策
協定書の中で、労働政策につ
いて記述がある第一章三節は、
「すべての者に雇用機会を」と
いうタイトルで始まっている。
今回労働政策に関して、最も大
きな方向転換が図られたのは、
最低賃金に関する部分である。
社会民主党(SPD)のショル
ツ労働社会大臣が力を注いでい
た前大連立政権時代の最低賃金
政策とは大きく異なり、協定書
では「われわれ(CDU/CS
U―FDP)は、(労使間の)協
約に関する自治を支持する。こ
れは社会福祉的な労働経済秩序
の枠の中で放棄し難い尊いもの
であり、国による賃金設定より
優先される。また、法による統
一最低賃金は、これを拒否する」
と述べている。その上で、既存
の法によって定められている一
部の職種に対する最低賃金につ
いては、二〇一一年一〇月まで
の二年間に、雇用機会の喪失や
経済成長を阻害する要因となっ
ていないかなどについて再検証
を行い、存続か廃止かを決定す
るとしている。
また、今年四月に連邦労働裁
判所が「公序良俗に反する(ほ
ど低い)賃金は禁止する」とし
た差し戻し判決(1)に沿うため、
これを法律に明文化することで
賃金のダンピングを防止してい
く。
(2)ミニジョブ(2)から
リアルジョブへ
低賃金で社会保険支払い義務
が発生しない一時雇用であるミ
ニジョブに関連する法律の改正
を行う。現行の規制の緩和もし
くは撤廃を行い、失業者を〝ミ
ニ〞ジョブから〝リアル(本当
の)〞ジョブに移行させるため
の新たなインセンティブを策定
する。
(3)失業対策と基礎保障実
施業務の見直し
社会扶助や社会保険について
は、第三章七節にまとめられて
いる。この中で、失業対策につ
いては、効率性に重点を置くた
め、連邦雇用エージェンシーの
役割を再検証し、現在実施され
ている業務に関する削減を含む
大幅な見直しを行う。
これまで連邦雇用エージェン
シーと各州及び市町村が共同で
行ってきた長期失業者に対する
支援策である失業給付Ⅱ(3)に
ついては、実施に関する業務の
整理を行う。すなわち、雇用連
邦エージェンシーと地方自治体
の業務の重複を省くため、実施
体制の再編を行う。
(4)育児手当の期間延長
第三章一節では、育児手当に
言及しており、これまで一四カ
月支払われていた育児手当の支
給期間を延長する。協定書では、
今後は共働き世代への一層の支
援強化を行い、子どもを育てや
すい環境づくりを行っていくこ
とを明記している。また、税収
入から支払われている各種児童
手当については、給付制度を簡
略化し、その一本化を目指す。
新政権は、今後この連立協定
書をもとに各個別の労働政策の
遂行にあたることになる。
なお、事前に労働関係者が危
機感をもって注目していたFD
P側から要請が出ていた解雇保
護規定の緩和については、今回
の協定書には一切記述がなかっ
た。現地メディアによると、C
DU/CSUの強い抵抗があり、
調整が難航し、結局合意には至
らなかったとのことであるが、
今後の情勢変化によっては、再
び政策論議の俎上にのぼること
も考えられる。
〔注〕
1.BAG Urteil vom 22. April 2009,5
AZR436/08。連邦労働裁判所は、
労働事件を扱う特別裁判所の最上
級裁判所に相当。
2.「ミニジョブ」とは、僅少労働
(Geringfuegige Arbeit) の通称であ
る。労働者がミニジョブに従事し
た場合、月当たりの賃金の合計が
四〇〇ユーロまでは、社会保険料
を支払わなくてよい。また、社会
保険加入義務がある「本業」に従
事しながら、一つのミニジョブを
行う場合は、本業の賃金と合算し
なくてよい。
3.社会法典第二編(SGBⅡ)「求
職者のための基礎保障
(Grundscicherung für arbeitsuchende)」
に相当。
【資料出所】
CDU/CSU―FDP連立協定書
" W A C H S T U M . B I L D U N G .
ZUSAMMENHALT"、委託調査員
月次報告、DEUTSCHE WELLE
(〇九年九月二九日、一〇月二八日)、
Financial Times(〇九年一〇月二
五日)
(国際研究部)
海外労働事情
Business Labor Trend 2009.12
51
フランス
若年者支援策を発表
雇用情勢の悪化が続くフラン
スではサルコジ大統領が、二〇
〇九年九月二九日、高失業率傾
向が特に深刻な若年者に対する
支援策を発表した。今回の支援
策は、同大統領が、同年四月二
四日に発表した若年者の緊急雇
用対策プランを補足するもの
(1)。
DARES(雇用省統計局)
によれば、二〇〇八年第1四半
期に七・一%であった失業率(海
外県除く)は、同年第4四半期
には七・八%、二〇〇九年第2
四半期には九・一%にまで上昇
している。特に、一五歳以上二
五歳未満の若年者の失業率は、
二〇〇八年第1四半期で既に一
七・四%に達していた。以後、
四半期毎に一八.七%、一九・
一%、二〇・七%、二二・三%
と上昇し続け、二〇〇九年第2
四半期には、二三・九%にまで
達した。
同大統領は、フランスが数十
年も前からヨーロッパ諸国の中
で若者の失業者が最も多い国と
なっているにもかかわらず、有
効な対策を講じてこなかったと
し、「若者の一人一人の自立を可
能とする」政策を実施する必要
があると主張した。昨年からの
景気悪化の影響を受け困難な状
況にある若者の自立を促すこと
を目的とした支援策は、就業だ
けなく、生活や学業など多岐に
わたる内容となっている。主な
内容は以下の通り。
1 .RSA(積極的連帯所
得手当)の拡大適用
二〇〇九年六月からフ
ランス全土(海外県を除
く)でスタートした、日
本の生活保護制度に相当
する「積極的連帯所得手
当( R S A : revenu de
solidarité active)」の支
給対象者は、原則として
二五歳以上(扶養する子
供がいる場合は二五歳未
満でも可)であるが、こ
れを「一八歳以上二五歳
未満で、過去三年間に、
二年間(三六〇〇時間)
以上就労していた者」にまで拡
大する。
同制度は、一九八八年に導入
された「社会参入最低所得手当
(RMI: Le revenu minimum
d'insertion)」と、「単身手当(A
PI)」及び「雇用手当(PPE)」
に代わる制度で、「働かずに生活
保護を受けるよりも、少しでも
働いた方が収入増加につながる
制度」として、一部の県での試
験的導入を経て、二〇〇八年一
二月一日の法律により全国的導
入が決定、二〇〇九年六月一日
から実施された(2)。
今回の適用拡大措置により、
一六万人の若年者がRSAの適
用対象となり、これに対して二
億五〇〇〇万ユーロの支出を政
府は想定している。
2 .Civis(社会活動参入
契約)の拡充
一六歳から二五歳の、バカロ
レア(大学入学資格)以下の低
学歴者を対象に、一年間(更新
可能)の個別指導や職業訓練、
研修などを通じて就業支援を行
う「社会活動参入契約(Civ
is : Contrat d'insertion dans
la vie sociale)」の活用を促進
する。
現在、Civ is を利用した
一八歳以上の若者には、最高で
年間九〇〇ユーロの手当が国か
ら支給されているが、この額を
引き上げる。具体的な額は未定
だが、Civ is 関連に八〇〇
〇万ユーロの支出を政府は想定
している。
3 .「社会奉仕活動(service
civique)」の促進
例えば、赤十字などの公共・
公益機関において市民への奉仕
活動を行う「奉仕活動(service
civique volontaire)」を促進さ
せる。フランスでは、二〇〇一
年まで、成人男性に一〜二年間
の軍又は公共・公益機関での役
務が義務付けられていた。同制
度は、若年者の雇用を確保し、
職業活動の経験をもたせるとい
う意味を持つとともに、社会規
範を習得する機能も担っていた。
同制度の廃止後は、任意で、公
共・公益機関での「奉仕活動」
に参加することができ、期間は、
通常六カ月から一二カ月間で、
低額ではあるが報酬も支払われ、
各種社会保険制度にも加入でき
る。しかし、若者の間にはあま
り浸透していない。
今回の支援策では、二〇一〇
年に一万人の若者をこの「奉仕
活動」に従事させることを目指
し、四〇〇〇万ユーロの予算を
計上する。
4 .一六歳から一八歳の低学歴
若年者に対する支援
学業修了書を得られずに義務
教育を修了した若者(一六〜一
八歳)全員に、職業訓練を受け
る義務を課す。教育制度から脱
落した者を職業訓練制度に組み
込むことで、職業資格の取得を
促進させることが狙いで、地方
の進路指導プラットフォーム
(plates-formes régionales
d'orientation)を中心として、
大学区本部、見習訓練センター
(CFA)、地域ミッションセ
ンター(missions locales)の連
携を強化し、二〇一〇年に三〇
〇〇万ユーロの予算を計上する。
5 .企業による学費支援の検討
卒業後一定期間、その企業で
働くことを条件として、企業が
学生の学費を負担する制度の導
入にについて、労使で検討する。
経済的な理由から、学業の継続
を断念する若者を減らすと同時
に、企業にとっても、必要とす
る人材を早期に確保することが
目的。
今回の若年者支援策について、
政府は、二〇一〇年だけで四・
六億ユーロの支出を見込んでい
る。これらの支援策は、二〇一
〇年の社会保障予算案などに盛
り込まれ、国会審議を経た後、
来年から施行される見通しであ
る。
〔注〕
1.JILPT海外労働情報 フラ
ンス 二〇〇九年六月 「若年者の
雇用対策、一三億ユーロの新プラ
ン」(http://www.jil.go.jp/foreign/
jihou/2009_6/france_01.htm)
2.JILPT海外労働情報 フラ
ンス 二〇〇九年九月 「RSA
(積極的連帯所得手当)スタート」
(http://www.jil.go.jp/foreign/
海外労働事情
Business Labor Trend 2009.12
52
jihou/2009_9/france_01.htm)
【資料出所】
フランス大統領府HPhttp://www.
elysee.fr/documents/index.php?mod
e=view&lang=fr&cat_id=8&press_id
=2964
(国際研究部)
韓国
雇用動向に好転の兆し
韓国統計庁が一〇月一四日に
発表した九月の雇用統計指標に
よると、就業者数は二三八〇万
五〇〇〇人で前年同月比七万一
〇〇〇人(〇・三%)の増加と
なった。先月(三〇〇〇人増)
に続くプラスとなり、増加幅は
一〇カ月ぶりに最高値を記録し
た。
失業率は前月から〇・三ポイ
ント下降し、三・四%となって
昨年末の水準にまで回復した。
失業者数は八二万六〇〇〇人で
前年同月比一〇万三〇〇〇人
(一四・三%)増加となったが、
前月比では七万九〇〇〇人の減
となっている。
産業別の就業者数は、前年同
月比で事業・個人・公共サービ
スが五・五%増となったほか、
電気・運輸・通信・
金融も〇・二%増
と微増。しかし建
設業(四・二%減)
や製造業(三・〇%
減)などは減少し
ており、依然とし
てこうした分野の
雇用は厳しい状態
が続いている。
就業者数を年齢
別にみると、先月
に続き、五〇歳代
(五・五%増)と
六〇歳代以上(四・
一%増)が増えた
ほか、一〇歳代も
四・四%増加して
おり、一〇歳代の
雇用が回復基調に
ある一方、二〇歳
代(三・五%減)
や三〇歳代(二・三%減)など
はマイナスとなった。
同庁関係者は「政府の雇用政
策により公共部門の雇用創出効
果がみられたため」と説明して
いるが、建設・製造業など一部
民間部門の雇用は依然として低
調なため、まだ本格的な回復と
いうには時期尚早とする見方も
ある。
【資料出所】
NNA、韓国統計庁
(国際研究部)
中国
建設業で農村出身労働者
の職業訓練
人的資源社会保障部はこのほ
ど住宅都市農村建設部と共同で、
農村出身労働者の就業の安定化
を目的とした『建築業農村労働
者職業訓練モデル事業実施規
則』を発表した。モデル事業の
主体は建設業をメインとし、研
修対象は原則として主に研修に
自主的に参加する建設業在職中
の農村出身労働者とする。現在、
全国の建設業には農村出身労働
者が約三二〇〇万人いるといわ
れており、これは建設業に従事
する労働者総数の八五%を占め
る。また出稼ぎ農民労働者の四
分の一が建設業に就いていると
いわれ、この層の職業訓練は政
策的に重要なテーマとなってい
る。
同規則の導入により、法定労
働年齢範囲内の労働者で、すで
に建設関連企業と六カ月以上の
期限で労働契約を結んでいる、
あるいは労働契約の締結日より
六カ月に満たない在職の農民労
働者は、いずれも研修に参加す
ることができる。
モデル事業は基本的には施工
元請け企業が主体となって実施
する。研修プログラムは職業訓
練機構が管理し、職業技能評価
機構が研修に参加した農民労働
者の評価を行う。政府は研修修
了試験に合格した農民労働者に
修了手当を支給し、さらに初回
の技能検定に合格し(国が規定
する技能職種に組み込まれた職
種に限る)、職業資格認定書を
取得した者には資格手当を支給
する。
モデル事業の研修期間は、各
職種や持ち場のニーズに基づい
て確定するが、原則として一二
〇ユニット以上とし、実際のオ
ペレーション時間を研修全体時
間の六割以上としなければなら
ない。モデル事業の研修に参加
する農村出身労働者の研修費用
と検定受験費用は、政府、企業、
労働者個人が分担して負担する。
モデル事業全体の研修資金と検
定資金は、実施企業が原則とし
て事前に立て替えるが、一部の
事前支出や一部立替の方法を用
いることもできる。任務が完了
し、参加者の修了試験が終了し
た後、モデル事業実施企業は関
連データに基づいて現地のモデ
ル事業指導グループに報告し、
人力資源社会保障部、建設部、
財政部の承認を得た後、財政特
別資金管理局から助成金を受給
できる手続きとなっている。
【資料出所】
海外委託調査員、『中国労働保障報』
(国際研究部)
3.1
3.3
3.6
3.9
4.0
3.8 3.8
3.9
3.7 3.7
3.4
3.0
3.5
4.0
%
失業率推移
資料出所:統計庁
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